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2011. 11. 15  
伊藤計劃という方の著書「ハーモニー」と「虐殺器官」が同時に手元に来た。ともあれ「虐殺器官」の方が発表も時系列も早かったらしいので、まずそちらから読む。」

凄まじいことに、1日で読みきってしまった。めっきり読書力が落ちているのに、自分でも驚くほどの久しぶりの興奮。
いや、興奮というよりは戦慄。総毛立つ、などというような浅いものではない。骨の髄からひっくり返されるような驚異。

そして今日は「ハーモニー」。
タイトルと著者名、そして高評価。この3つだけは知っていた。なにせSF大賞と星雲賞、ダブルクラウンに輝く作品なぞ滅多には無い。プロが選ぶSF大賞とファン投票で決まる星雲賞、通常は傾向が異なるのが当然であり、それが一致するとなるともうそれだけで破格の証明なのである。

で、これまた1日で読了。
とにかく読みやめられないのである。驚異、驚愕、戦慄。次から次へと引き摺り出される、眼前にあるのに気づかずに済ませ続けてきた現実とコトワリの暴露。揺さぶられる常識、そして意識。なんとなく当たり前だと思っていたことがガラガラと崩壊し、それまで思っても見なかった概念が新しく上書きされていく、目眩に似た感覚。

センス・オブ・ワンダー。

これが、これこそが、SFだ!! と声を大にして何度叫びだしそうになったことか。生粋の、混じりっけ無しの、まったきSF。

現実の意味を問うこと。人間とは何かと問うこと。生きるとは何かと問うこと。心とは、魂とは、意識とは、世界とは、総てが何か、そして何故かと問うこと。

宗教が幅をきかせる以前、それらはもっぱら哲学の使命だったのだろう。
科学という補助線を人間が手に入れて、SFが産まれた。それらは時に哲学も宗教も持ち得なかったアナーキーな、破壊的な、この世のものとも思えぬような衝撃性を帯びた。見たことも考えたことも無いもの、大いなる未知。そんなものがあるとは夢にも思わなかった事柄が、現実性をもって脳裏に刻み込まれる体験。
それを知った後では、世界がまったく変わって見えてしまうような、生き方すら変わってしまうような、とんでもない何か。

そういう思いを味あわせてくれる作品、表現というものは本当に滅多にはお目にかかれないのだ。これほど年をとってしまうとなおさらだ。特に最近はあれこれのフィクションに倦んでしまっていた。どこもかしこも、見たような、読んだような、聞いたような、千度繰り返されたであろうオヤクソクの羅列に満ちている。
「だってそうでないと売れないんです」
ああ仕方ないよね。そういうたぐいの仕方ないことで世は満ちている。いろんなことを仕方ないしょうがないで飲み込んで日々を生きる。年を取り、いろんな可能性がすり潰され、感性も磨耗して、安心、安定、安穏を求めて生きる。たまに眼を見張るような新奇に出会えば欣喜雀躍。

だがそこまで老いてもまだなお、これほどの震撼に私は出会うことが出来たのだ。歓びじゃない。愉悦ではない。官能でも感激でもない。
残酷で、苛烈で、容赦の無い、夢も希望も無い、愛だの恋だの薬にもしたくない、信頼も仁義も人道もお呼びで無い、ギリギリまで削ぎ落とされた現実。過去でも未来でも異世界でもない、今まさにそこにある世界が抱える問題こそが立脚点。直視に耐えない恐怖。たいていの人間が逃げ出し目を背け無かった事にして頭を幻想の毛布に突っ込んでやり過ごそうとする厄介なもろもろの事ども。
真理とは冷酷で恐るべきものなのだ。
それほどの修羅の只中に立ち、まっしぐらに問い続け、ビジョンを見つめ続け、一歩も逃げずに淡々と答えを書き続けた伊藤計劃という人物。なんという胆力。なんという豪力の筆。
そしてもう出会うことのない人物であるという事実。

伊藤計劃さん、奇跡のような作品を書いてくれてありがとうございました。少しでも多くの人が貴方の作品に触れてくれるように今後ほんの僅かずつでも伝えていきたいと思います。



















****************どうでもいいこぼれネタ**************

ハーモニーを読んでてとあるSFアニメを思い出した。
同時にトキワ荘時代の逸話を一つ思い出した。

某若手漫画家の一人は頻繁に映画を観に行った。
そしてたちまち「新作のアイディアを思いついたぞ!」と叫んではゴリゴリ描いた。
だがそのアイディアはすなわち観たばかりの映画の改変だったという。
でもその漫画家にはパクリの意識はなかったそうな。刺激を受けて産まれたオリジナルだと思っていたそうな。

しょうがないよね。あまりに凄いものに出会ってしまったら、自分もそんな風なもの、やってみたくなるよね。
元ネタを越えられると良いのにね。はてさて。
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人生50年、オタク歴40年弱、母親業四半世紀。老眼とボケが迅速に進行中。麗しいロボ執事をはべらせるのが老後の夢。

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