--. --. --  
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2011. 12. 24  
終わった終わった。というわけでクリスマスイブである。狙ったかのごとし。

ウテナ以上にわけわからん、意味不明、伏線ほっぽり出し、けっきょく何がどうなって、アレとかソレは一体なんだったんだ説明しろハッキリさせろ理解できないからクソ二度と観ない等々、ちゃぶ台ひっくり返してキレておられる向きもあろうかと思うけれど。
こと幾原監督に限っては、「合わなかったのなら仕方ないですね」としか言い様が無かったりする。
基本、私は不明瞭で伏線バラマキほっぽり出しのお話は大嫌いだ。
だが、幾原監督の作品は、暗喩や寓意だらけではあるけれど不明瞭だとはあまり思ったことが無いのだ。凡百のクリエイターがやったことなら激怒する曖昧も、逆に大好きになってしまう。幾原作品は、わけわからなくても、伝えたい事はハッキリしていて、迷いが無いと感じるからだ。

ただ、それを判りやすく形にしてしまうことを避けるのがスタイルなのだろうと思う。
判りやすくすることで、逆に伝わらなくなるもの、こぼれ落ちてしまうものがあまりに多い。
描きたいことや伝えたいことがあまりに多い場合、並の方法ではどうしてもやりきれないことがあるのだ。
だから幾原監督は演出に徹底的に凝る。その上で、謎と装飾を積み重ね、イメージから真意を汲んでもらおうとするのだろう。

言葉にしてしまった瞬間、崩れて失せるものがある。
目に見えた瞬間、固定されて吹き飛ばされる残滓がある。
イメージ主体で伝えること、受け取った側がそれぞれの人生の中から意を取り出して益とすることで、それらのこぼれ落ちを救済すること。
その「それら」が作り手の中で明確に指向され把握されているならば、私は不明瞭を愛せるのだ。
だが、その手腕だけを利用して己の甘えや低能の誤魔化しにする輩もたまに居るので、そういう場合は私は激怒するのだけど。


ウテナは、女の子たちへの捧げ物だったと思っている。
「こんな風に生きて欲しいです」
というお話だったのだと思っている。

ピングドラムの終盤、私はこっちのお話は男の子たちへの捧げ物になるのだろうと思った。
「そろそろそんな生き方はやめて、こうしませんか」
というお話になるのだろうと。

その予想は的中したと感じた。物語は綺麗にたたまれて見事に完結した、と感じた。何の不満も無い。
ただ私は男の子ではなく、ウテナの薔薇はもう受け取り済みであり、今回の最後は少しばかり蚊帳の外、とも言うべき一抹の寂しさも味わった。
そして、この話が伝えたかったことをどうにも受け入れられないまま「わけがわからないよ!」と踏みにじって忘れ果て、相変わらずのままでしか居られない餓鬼がいっぱいなのだろうな、と思うと暗澹たる気持ちになる。
まさに今、この世は餓鬼のすみかなのだ。餓鬼は餓鬼を増産し、奪うこと、貰うこと、得すること、そして自分の価値が上がることばかり思い暮らし、それが叶わぬ世に怒り恨み憎む。
さて、ピングドラムのリンゴはそんな世の男の子たちの心にどれほど届いてくれるだろうか。



さてここからは私なりのある受け取りであり解釈。最終回、特に面白いと感じた点。
ラストがそのまますんなり第一話の冒頭に繋がっていること。その上で主人公の部屋を見比べると、凄すぎる差異にもう笑うしかなかった。
気の狂ったような色彩感覚と、ごく常識的な範囲の簡素に収まった色合いと。
「私はずっと小さな罰を受け続けてきたよ」と語られたこと。
あのてんこ盛りの極彩色こそが、「小さな罰」の積み重ねだったのだな、と解釈した。
別に好きでも欲してもいないアレコレを、勝手な解釈で良かれ良かれと押し付けられ続けたこと。
「こういうの好きだろう? こういうの嬉しいだろう? こういうのを、あげたいんだ」
と降るように注がれ続けたこと、それを拒めなかったこと、それどころかニコニコと喜ぶさまを返さねばならなかったこと。怒る権利も嫌がる権利も無かったこと。
それが「愛」であり「正当」であり「アリガタイ」であると縛られていたから。
嫌悪も不自由もひっくるめて飲み込み続けていなかればならなかったこと。
否応なく降り注がれる愛情に窒息しかけてそれでも笑って居続けたこと。ずっと、ずっと。
それこそが罰を受け続けてきたと感じたことなのだろう、と。

そして思い出したのは、萩尾望都さんの「残酷な神が支配する」で描かれた、とあるリンゴのことだった。
独善的な母親の庇護と干渉のもとで息苦しさに死にかけていた少女が見た夢、そこに現れた魔女の姿の母親が泣きながら娘に差し出した「ママの愛で味付けした毒リンゴ」をカプっと齧るシーン。

愛の名を騙る暴虐。
餓鬼の見るロマンの正体の大抵はそんなところだ。



関連記事
NEXT Entry
相互理解と尊重と
NEW Topics
初めてなのに懐かしい  Fate stay night
さらば上石神井
過ぎ行く2013
現実はドラマティックを狙わない
新生ライフ
アイウエオの歌
文は人なり
曲線美
風立ちぬ
ぜろせん!
Comment
Trackback
Comment form
 管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

星 ゆう輝

Author:星 ゆう輝
人生50年、オタク歴40年弱、母親業四半世紀。老眼とボケが迅速に進行中。麗しいロボ執事をはべらせるのが老後の夢。

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
月別アーカイブ
ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。