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2012. 01. 16  
「落語とは業の肯定である」が信条だったという立川談志氏の高座の録音をボチボチと聴いている。
流石に面白い。特にマクラの切れ味と言ったら、まさに格別。
落語のマクラというよりは、毒舌コラムニストが、ひたすら述べる感じ。そして、噺の方に入ると、緩急自在のコントロールの振り幅がまた凄い。スピード、テンポ、ピッチ。なぜか外来語でしかイメージ出来ないのは私の非才と無知のせいだけど、音楽的なほどに、天才的演奏のように、速度やトーンの操作が凄い。
そう、凄み。
その一言に尽きる。唯一無二と言われる理由がなんとなく判った。
凄みという意味では、枝雀の眼光にも似たようなものがあったなぁ、と思い出すけれども。

さて今日聴いていたのは「付き馬」という噺だった。

ところがまぁ困ったことに、私にとってこれ、全く楽しくないお噺だった。
男が一人で遊郭にやってきて、言葉巧みに茶屋に上がりこみ、大いに豪遊する。
翌朝、勘定を貰いにやってきた茶屋の若い衆を、これまた立て板に水の弁舌でだまくらかしつつ振り回す……という、詐欺師モノなんである。

その手練手管の巧妙さが笑うところなのだろうけど、私の場合どうもいけない。
腹がたって腹がたってしょうがなくなってしまうのだ。不快と怒りと、振り回される方も何故もっとちゃんとキッチリ対応しないのかと不甲斐なさにイライラする。

詐欺師の口のうまさを談志が独特の自在テンポで演じきってるあたりが迫真なだけに、なお一層ムカツクのだった。よくもまぁこんなに抜け抜けと、白々しい嘘を、ごまかしを、軽やかに踊るようにこなして、他人を騙してむしり取って、綺麗サッパリとしていられるものだ、と行き場のない憤りにかられてしまう。

俺を信じろだの、俺はたいした者なんだからだの、俺は出世するんだの、お前さんにも得になるからだの、とにかく調子の良いことばかりベラベラベラベラ、付け入る隙を与えちゃ負けだとばかりにまくし立てる。リズムに乗ってる限りは大丈夫、つまりノリがすべてとばかりたたみかける。

でもって、サゲがまぁそのなんだ、知ってる方ならご存知の、あの通り。

ぐぎぎぎぎぎぎ。ああ腹立つ。据えかねる。くっそー。フィクション相手にこんなに憤激するのは久しぶりかも知れない。ダメだーっ! 談志師匠、笑えない、笑えませんよこれ! 芸が凄いからこそ笑えませんよ!

世の中には確実にこの詐欺師みたいな野郎が数多居て、その周囲で泣いている人はさらにその数層倍居るのだ、って事実こそが、人間の業の一つということなのだろうけど。

とか悶絶していたら、突然頭のてっぺんにポロリとお告げが降ってきた。

「まぁそんな怒るなよ。アンタの大好きなかのローマのカエサルだって、実はこんなだったかも知れねえよ?」



うああああ。
そーなのだ。
勇将カエサル。冒険者カエサル。ローマの独裁者カエサル。端正な文章や創作物を多々著したクリエイターのカエサル。豪毅で果敢で潔く、男からも女からも絶大な人気を集めた英雄。我が憧れ。

だがしかしっ!
彼は金にだけはだらしなかった!

ごく若い頃から借金、借金、借金の山。金の交渉はとにかく汚くかつ大胆で、真面目に返す気などまったく無かった男。膨れ上がる負債は次から次へと他人に押し付け、最終的にはローマ最大の富豪にすべてのケツを持たせてしまう。しかもローマの統治権の分割と引き換えに、だ。
もしかしてローマの周辺国家をどんどん併呑していったのは、莫大な借金をなし崩しにチャラにするため……?!

ともかくカエサルは、カネ、というものを普通一般の常識とはまったく違うように捉えていたのではなかろうか、そして経済社会を大胆にデザイン刷新するためにこそ、ブルドーザーのような領土拡張を行ったのではなかろうかとまで思えるほどの、非常識な金の使い方をした男。

彼が借金を踏み倒す時、この「付き馬」の詐欺師野郎のようなチャラチャラ弁舌で周りをケムに巻いてはサックリとんずらを決め込んで知らん顔、みたいなノリだったのだとしたら。

あり得る。なんだか大いに有り得る気がする。納得出来るような出来ないような、そんな微妙な眉間の皺を今夜は刻んで寝ることになりそうな。

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人生50年、オタク歴40年弱、母親業四半世紀。老眼とボケが迅速に進行中。麗しいロボ執事をはべらせるのが老後の夢。

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