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2012. 08. 21  
息子と一緒に「おおかみこどもの雨と雪」を観てきた。
とても心地よく泣ける作品。
ただ、息子の好みに合わないものではある。それを承知であえて連れて行った。
自閉の強い息子は幼い頃からのお馴染みのものばかり観たがる。あまり知らない世界に目を向けようとしない。
たまにはまったく毛色の違う作品に親しんで欲しかったのだ。

おおかみこども、は不思議な感触のアニメーションだ。ジャンルでいうと文芸、ということになるのだろうか。
可愛らしい絵柄からは想像つかないほどの過酷なシーンもある。
そもそも、楽しいエピソードよりも辛いエピソードの方が多い。子供向けの娯楽作品にしか用の無い息子にとっては、辛い内容でもあったはずだ。
が、そこはさすがの細田監督。鬼の演出力だ。気に入らない映画に対すると、体をよじって目を背けてしまう息子が、画面を食い入るように観ているのだ。

好きじゃないのに、楽しくないのに、目が離せない。
そういう葛藤をともなった視聴体験を息子が初めて味わっている。
映画の中ではヒロインが一心不乱に子育てをしている。
二重の意味で、私にとって感慨深い鑑賞になった。



内容については、疑問に思う箇所もある。
映像としての力は凄いのに、内容が都合よく出来過ぎていて、違和感が発生しているのだ。

高い演出力、きめ細かい動き、よく考えられた上で詳細に描かれた背景。
生々しいアニメなのだ。
なのに、エピソードが、あまりに非現実だったりする。
「狼人間との間に出来た子供たち」というファンタジーな設定のことではない。私がとにかく気になったのは、時間経過の描き方だった。次に、お金の少なさと、実際に取り扱われる物資の量の乖離っぷり。

「いやいや、そんな素早く作業が済むわけないでしょう」

「いやいや、そんな金の減り方無いでしょう、無限の財布かなにかあるのかよ」

こういうあたりがとにかく気になる。あまりに現実味が無い。映像にはリアリティがあるのに、内容にそれが無い。

なまじアニメとして心地よく仕上がっているだけに、その乖離はとても目立った。
結論として思ったことは、これは形を変えた萌えアニメである、ということだった。理想化されすぎている。都合よく整理されすぎている。描きたいことを絞り込むために、剪定されすぎている。

だが、その剪定されて切り落とされて捨てられてしまった部分にこそ、人生の真理がふんだんに含まれているような気がしてしまったのだ。なにか、足りない気がしてしまうのだ。そうじゃないだろう、とチクチクしてしまうような。

だが、それでも観てて心地良かった。
理想化、ええじゃない?
夢、ええじゃない?

このごろの、人心の荒れ果てっぷりは際限もない。母は子供に情愛を持って接するもの、なんて概念は完全に崩壊している。
そして、その容赦の無い現実は、作品内にもピリッとした形で混ぜられている。

母たるもの、こうあってほしい。子供は、こう育てて欲しい。
正解なんか無いのが子育てで、理想を追うのが正しいとも限らない。
そうだとしても、「王道」をはっきり形に示すことで、なんらかの指針にして欲しい、そんな理念で作られた作品でもあるのだろう。

理想をイメージ化して無意識にまで叩きこむために、リアリティを排除して剪定をすることは、必要なことであったのかもしれない。



華奢な体に似合わぬ根性と体力の持ち主、そして大いなる寛容のヒロインを、宮崎あおいさんが素晴らしい演技で表現していた。一見、フワフワと掴みどころのないようでいて、完璧な母性。非の打ち所のないおかあさん。頑張る、ということを、頑張るという意識なしにこなせるたくましさ。

これから子供を産み育てる若い女性たちにこそ観て欲しい。あまり共感はしてもらえないかもしれないけれど。
すでに子供を産み育てた女性にはもっと気軽にオススメ。あるある、ナイナイで盛り上がれる。

まだまだ心が幼い私の息子にとっては、とても哀しいお話だと感じられたらしい。
でも私には、この上なく幸せな話に見えた。幸せといって不適ならば、円満というべきか。
哀しみは人生の一部であり、排除するのではなく、受け入れてなお円満足り得るよう心するべき、という辺りなのかもしれない。


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うちも行ってきました
こんにちは!
今ゆう輝さんの記事を見てビックリ。我が家も昨日家族でこの映画を観てきたところです。

私も感情移入できるところとできないところ、あるあるナイナイを感じながら観ていました。
「もし自分だったら・・・」と仮定するのも難しい設定ですが、あの環境にあって前向きに明るく子供たちと生きていく姿は理想の母親像だと思います。
自分がなりたいと思う憧れの「母」でした。
本当に寛容ですよね。

あと、かなり駆け足で端折られた感じがした少年少女のエピソードですが、距離が縮まる過程をもう少し掘り下げて描いてくれると嬉しいのにな~と、物足りなさを感じました(>_<)
尺の関係もあるのでしょうけど。
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Re: うちも行ってきました
やっぽさん、お久しぶりです^^ノ

けっこう長い映画でしたよね。息子は流石に途中でネを上げ「いつまでも終わらないよ」とベソってました。
それでも、13年間をみっちり描くとどうしてもああいう感じにはなるんでしょうね。

ライムスター歌丸さんのラジオ「シネマハスラー」でレビューがありまして、実に深い読みと分析が語られ、たいへん面白かったです。

あまりに演出が深く繊細すぎて、かえって伝わらないこともある。
でも、実は必要なことはすべてちゃんと描かれているのだ、という実証がたくさんありました。

私が「作業が早く終わりすぎだろ!」と感じたあたりも、実は私が見流してしまったわけで、何日もかけてるくだりを短期間のように誤解してしまったのかぁ、と思ったりしてます。

いっけんおとなしい作品ですが、とても深いアニメだと思います。いずれ是非また観てみたいです。
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プロフィール

星 ゆう輝

Author:星 ゆう輝
人生50年、オタク歴40年弱、母親業四半世紀。老眼とボケが迅速に進行中。麗しいロボ執事をはべらせるのが老後の夢。

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