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2009. 09. 09  
カエサル著「ガリア戦記」、遅々として読み進まず。端正かつ抑制のきいた名文なのだが、小説というわけではない単なる報告書なので、淡々粛々としているのでつい眠くなってしまうのだった。でも、報告書の割りには激しくドラマチックな部分も多く、カエサルという人が理知的でありながらロマンチストでもあったという、多様で深い人間性を持っていたことを伺わせる。ついでに言うなら、政敵が多かったローマ本国へ向けての報告なので、いささか粉飾的かつ演出過多な要素が盛り込まれていた可能性は大いにある。早い話がプロパガンダでサービス、サービスぅ! みたいな。

でも、7巻あたりから、掛け値なしで猛烈に面白くなってくるのである。
ガリアの英雄、ウェルキンゲトリクスが登場するからである。

ウェルキンゲトリクス。なんだこの長い名は。覚えるまで何週間もかかったわ。ちなみに綴りはVercingetorix。言語によって音も変わる。rixは王。verは優れたとかスーパーとか上位とか言う意味。
cingetoは、戦士とか歩兵などの関連語句だそうで、意訳すると「超絶戦闘王」てな感じになるのか。
けど私はあえて「闘鬼」と呼びたい。彼の戦略も生涯も、苛烈極まるものだからだ。

カエサルのガリア遠征が数年に及ぶ頃、部族同士で対立をくり返し続けてきたガリアの民を一致団結させる英雄があらわれた。齢(よわい)わずかに20前後。年だけ見れば単なる青二才だ。だが彼は他の誰にも真似できない力を持っていた。おそらくは、意思、ビジョン、戦略、行動力。そして「こいつに従うしかない」と老若男女に思い込ませる、圧倒的カリスマ性であったろう。
王者の資質である。

圧倒的戦力を誇るローマ軍に対抗するため、ガリアに必要なことはまず団結。ウェルキンゲトリクスは、諸部族の長を招集し、誓いを立てさせ、裏切れぬように大量の人質を差し出させる。
ローマ軍の武力は超大。だが超大ゆえの弱点はある。「メシ」の問題である。腹が減っては戦(いくさ)はできぬ。補給を絶つことでローマ兵を飢えさせ、弱体させて追い返すというのがウェルキンゲトリクスの基本戦略であった。
そのためにウェルキンゲトリクスが実行したのは、ガリアの都市、村、耕地に火をかけ破壊するよう命令することだった。自分の国、故郷、祖霊の地、手塩にかけた作物、財産、それらすべてを我と我が手で葬り去らねばならなかったガリア人は、だがそれでも
「今は辛くとも、明日のガリアの自由のために」
と信じて、心を鬼にして従ったのだった。
食料は現地調達が基本だったローマ遠征軍は、これによって大いに苦しむことになる。

だがカエサルも人類史上最強クラスの超人英雄。両陣営の激突は熾烈を極める。
なんだかんだいろいろあって、追いつめられたガリア陣営。最終決戦地アレシアの戦いにおいてついに敗北したウェルキンゲトリクスは民にこう告げたとされる。

「この戦いは己の栄誉のためではなく、全ガリア人を解放するための戦いだった。運命が私に敗北を与えたのならば、それに従うことにしよう。私を殺すか、あるいは生きたままローマ軍へ引き渡すか、諸君らが選択したまえ」

ガリアは、ウェルキンゲトリクスをローマに差し出すのだった。
武装を放棄し、ローマの虜囚となり、カエサルの大凱旋式に引き据えられた後に処刑され、わずか26年の生涯が終わる。

カエサルは「寛容(クレメンティア)」を掲げ、敗者はきょくりょく虐げず、自軍の力として吸収同化にもっていこうとするのが常だった。それは建国以来、何百年も受け継がれたローマの伝統でもあった。
だがウェルキンゲトリクスだけは、殺すしかなかった。天才は天才を知る。有能であり、翻らぬ男。生かしておいては、必ずローマの害となったろう。危険すぎたのだろう。
常人が及ばぬ高みから物事を見ていた孤高のカエサルにとって、ウェルキンゲトリクスは唯一無二の好敵手、同じ目線でいれる者、敵でさえなければどれほどにも信頼できる畏友にもなれたのだろうと、存在を惜しんだのではなかろうか。ガリア戦記には、カエサル自身がどう思い感じたか、というような個人的な情動の記述というものはほとんど無い。(そもそもが三人称で書かれている)だが、ウェルキンゲトリクスについて述べるくだりの文章が、溌剌と、いきいきと、跳ね踊るように輝き出すのに触れていると、内に秘めたカエサルの思いが声無き声で綴られているような気がしてくるのである。


ウェルキンゲトリクスが主人公の小説や、映像はあまり無いようだ。日本語だと
(1) 『ガリア戦記―ローマに挑むケルトの若き狼』 村上恭介著/学研
(2) 『カエサルを撃て』 佐藤堅一/中央公論社
これくらい。
映像だとこれくらい。

ネタとして結構な大穴物件じゃないかな。

あと個人的に歴史上の大穴物件的人物として調べてみたいと今思っているのが、フン族のアッティラと、アラビアのサラディン。まぁその前にボルジアさんちに行っとかないとならないのだけど。それ以前にローマ史勉強いつ終わるんだw まだアウグストゥス帝の詳細すら読んでないのに!



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世界史フラッシュ
オレ、この世界史板のフラッシュ大好きだったんだよなー
アヴァロンのテーマがこれまた絶妙にマッチして、涙もん!
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Studio/1715/garia.html
Re: 世界史フラッシュ
まんもさん>
いいフラッシュですね、ウェルキンゲトリクスの戦いが短時間で判る^^
ディティールを整理して、2時間か3時間くらいの映像化には最適のネタだと思います。
二十歳そこらで、全ガリアをまとめきった、というあたりが彼の凄さだと思うんですよ。どれほどのカリスマ性だったのでしょうね。きっと、アレクサンドロスにも匹敵する至高の美男子だったであろうと信じてます(*^ω^*)♪
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星 ゆう輝

Author:星 ゆう輝
人生50年、オタク歴40年弱、母親業四半世紀。老眼とボケが迅速に進行中。麗しいロボ執事をはべらせるのが老後の夢。

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