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2010. 02. 14  
塩野七生さんのローマ人の物語、なかなか読み進まなかったとはいえ、ついに最終巻「ローマ世界の終焉」も残すところ5分の1なのである。

ローマが衰亡してゆき、いよいよ滅ぶというこの最終巻、読んでいて本当に辛い。
偉大すぎた帝国が滅ぶこと。それはとてもとても多くの時間を経過をかけた、どこまでも先細りに長い長い終焉なのであって、塩野さん定義するところの「西ローマ帝国終了」は、ほぼ誰も気づかないほどの、ひそやかでかえりみられない静かな沈んだ終わり方であった、というくだり。まさしく、そういうものなのだろうと思わずにいられない。大きく重く怒濤の如くであった運行ほど、停止までに長い距離が必要なものなのだから。物理的慣性法則が形而上にも適用可能なのだと思うとなんだか可笑しい。

全力を尽くしてローマを守り抜こうとしたにもかかわらず、どんどん立場を喪ってゆき、やがては処刑・記録抹消というローマ人最悪の最期を迎えることになった「最後のローマ人」スティリコの生涯であるとか、悪夢の伝説として今にその名を広く残すフン族族長アッティラの、意外にもアホーな行動(がっかりだよ!!)とあっけない死に様であるとか、反して、蛮族の長として30万超の民を率いて大移動を敢行し、ローマ無きイタリア半島に33年に及ぶ「パクス・バルバリカ(蛮族による平和)」を打ち立てた東ゴート族長・テオドリックの見事な手腕であるとか、読むのが辛いとは言え、読み応えのある物語にはやはり事欠かないのだった。

特筆したいエピソードを一つだけ。

イタリア王を名乗り、帝国終焉後のイタリア半島にしばしの平和と安定をもたらした東ゴート族のテオドリックの施政の基本は、「従来あったシステムを有効活用する」という点にあった。
支配権はゴートにあるが、行政の実行はローマ人と、そのシステムをそのまま残す、ということである。
ローマが長らく伝統として護ってきた国家運営システム、官僚組織、そして次代の育成のための教育体制など。
だが、支配側であるゴートのテオドリックは、ギリシャ・ローマ式の教育によって、ゲルマン民族たるゴートの魂が変質していくことを厭うた。
ゴート族の青少年は、ゆえに、学校にいかなくてもよい、とされたらしいのである。キリスト教徒としても、異なる教えのアリウス派であったゴート族の子弟は、バリバリのカトリックであるローマの教会組織に教育を施されることも無かったろう。
結果としてどうなったか。
自分の名さえ読み書きできない支配者としてのゴート族の誕生、である。
よって、テオドリックは、署名をせずとも書類決裁のできる「印」を普及させることになった。
そしていよいよ、ゴート族は支配者階級でありながら、国家運営のためには、伝統の教育をきちんと受けたローマ人を必要とせざるを得なくなっていった、という、この上もなく皮肉な事態を招いたという。

教育。

人間社会が健全で安定したインフラを獲得するために、教育がどれほど重要なことであるのかを証明する、これもこの上ない事例の一つであると思うのだった。




さぁ、頑張ってあと少しの、この長大な物語を読み切ってしまおう。
その後には、ヴェネツィアに行くんだ。海の都の物語。そして、コンスタンティノープルにも。ローマ去りし後のブリタニアがどうなったのかも。砂漠を馳せた十字軍とサラディンとの物語も。行くべき場所は無尽蔵にあるのだから。



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Author:星 ゆう輝
人生50年、オタク歴40年弱、母親業四半世紀。老眼とボケが迅速に進行中。麗しいロボ執事をはべらせるのが老後の夢。

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