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2010. 02. 26  
日記タイトルが3回連続でマンガのタイトル、しかもカタカナ続きというのは、単なる偶然也。

さて、「シグルイ」である。著者は山口貴由氏。 ←最新刊のAmazonのアドレスであるが、私が手に入れて、やっと今日読了したのは12巻まで。13巻はまだ買えてない。
私は、読む、のが速い。超速とまでは言わないが、通常の3倍くらいのスピードで読む。マンガを読むのも特に速い。1冊あたりで楽しめる時間があまりに短いので、趣味としては大変コストパフォーマンスが悪くなってしまうのが昨今の私にとってのマンガ鑑賞であり、購入も制限しなくてはならないので辛い人生ではある。
だが、そんな私が、このシグルイを読みこなすのにかかった時間たるや、えげつないと言うべきものだった。

「おかしい、話が複雑なわけでもなく、むしろ話があまり進まず、そして例えば「はみだしっ子」みたいに1ページ当たりのコマ数が多いわけでもなく、見開きや大コマばかりで、サクサク読み進むはずなのに、なんで。なんで、こんなに、読むのが重いんだ! 時間がかかってしまうんだーっ!! 20世紀少年(全24冊)やBECK(全34冊)なら1日で読めたのに!」

ほぼ絶叫状態で数日読み続けた。繰り返すが、全34冊のBECKなら一泊二日で済ませた私が、たかが12冊に数日かけてしまったのである。一体何事かと。

いやはやまったく、これこそは異常の作品、破格の作品、異端にして究極、並ぶもの無しの孤高の絶品と言えると思う。
似た傾向のある作品としては「ベルセルク」が思い浮かぶし、私は未読だが夫の人は「聖マッスル」を挙げている。

だが、比較は無意味かと思われる。

日本の漫画文化の歴史の中、様々な表現、描写の研鑽がなされてきたわけだが、このシグルイでの描き方ほど、極北に向かって先鋭化されたものもそうは無いのではないだろうか。比類無し、とはこのマンガのためにあるような言葉だろう。

とにかく画面が濃密なのである。それもそんじょそこらの濃密と一緒にしてはならない。ぶっちぎり、完全なる限界突破。ヒトコマ、ヒトコマにこめられる一瞬の密度の重さが、早読み、読み飛ばしを許さない。ガッチリと眼も魂も捕縛されて、スローモーションで展開される剣豪同士の究極の闘いに、剣技に、覚悟の深さと壮絶に、緻密に付き合うことにならざるを得ないのである。

この作品に、楽しさ、は無い。そんな気軽さを寄せ付けない残酷と酸鼻と苛烈の美に満ちている。

この作品に、萌えは無い。そんな甘やかなものなど薬にもしたくない世界。

ある種の生き様の人間にとって、色恋などより遙かに重要で大事な必至がある。生死よりもなお重いもの。
それを目指すならば、死と隣り合わせに狂わねばならないこともある。狂ってこそ果たせること。たどり着ける境地。人間でありながら人間ではない者になるしかない選択。鬼か魔物かケダモノか。「ひとでなし」、「キチガイ」、「異常者」、「変態」、そんな程度の言葉など薄紙より軽く吹っ飛ぶ壮絶な世界。
異端、異形としか言いようのないこの超絶の残酷と禍々しいまでの美を、よくぞ描ききっておられるものである。なまじの賞賛など追いつかない。驚嘆としか言えない。
漫画界が生み出した最高傑作の一つであることは間違い無いが、私はこれを到底、万人には薦めない。
読むならば、覚悟が必要である。(そういえば、著者の山口氏の出世作のタイトルこそが「覚悟のススメ」ではあったなぁ。いやゴメンナサイ、これまだ読んで無いんですよ、いずれ必ず読みますですハイ)

一般、であること。普通、であること。平凡であること、平和であること、和やかに、調和し、すべてを尊重しながら、善き社会人であること。
そういうことども総てに耐え難い思いを抱く人にこそ薦める。それでもやはり覚悟は持って臨んで頂きたい。この作品を手に取ったならば、目の前にあるのは生きて地獄に向かう扉に他ならないのだから。



なぜ、そこまで壮絶な残酷な作品が存在しなければならないのか、と問われるか?
存在は、必要なのである。
善なることばかりが求められる社会で生きることこそが地獄に他ならない、そんな人生があるのである。
対極の地獄に触れることによってこそようやく宥められ、解かれ、救われる魂があるのである。
異常、異形、異質、異端、そういうものに触れ、摂取し、解放を味わってこそ、ようやく「普通」の「善」なる社会に戻って生きていける力を貯められる。そうしてこそ穏やかでいられる。本物の残酷を現実にもたらすことなくやっていくための、それこそが平和のための手段なのである。
平和と安全のために仮想の残酷は欠くべからざるものであり、その存在を否定されるべきでは無い、と私は思うのだった。

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Comment
いいですよね
 シグルイ読まれましたか、私も連載が始まってからずっと読んでます。

 初連載作品「サイバー桃太郎」でド肝を抜かれ、「覚悟のススメ」「蛮勇引力」も読みましたが、山口さんの作品は、すごく必死に生きる人間を表現するのが上手いなと思います。

 ある雑誌編集者に、「山口さんは、覚悟のススメなどで既に作家として十分なネームバリューがあるのに、いまさらどうして掛川御前試合を書くのか」と質問されたことがあるそうです。

 山口さんは、その問いには答えを出さず「僕が今書きたいから書く」とだけ答えたそうです。

 山口さんの、この作品に対する情熱というか、覚悟というか必死さというのが伝わってくる気がしました。

 この掛川御前試合、先には、とみ新蔵さんが一度漫画化してるので、そちらも読んでみたいな~と思うんですが、中々見つかりませんw
Re: いいですよね
Mizuneさん>
さすがMizuneさん、お詳しい! 私はやっと、やっと! という感じです。もの凄く昔から、この山口氏の作品の凄さはあちこちで耳にしていましたし、書店で表紙を見かけるだけでも、その並々ならぬオーラは感じ取れていたのですが、「出逢うに時があり」ということだったのでしょう、この歳になってようやく手に取ることができた、ということのようです。
凄み、という一点で、この方の描画を追い抜ける人もそうは居ないと思いますし、繊細で美麗な描線でもって酸鼻を写す表現力も希有なことです。狂気でありグロテスクの極みであるのに、画面全体に満ちる静謐な品格がまた、たまらない魅力です。
必死な魂、覚悟の魂、そういうものを描き尽くそうとする熱意がとにかく破格なのでしょうね。
満開の桜。
蒼天の下の花吹雪。
「桜の花の下には……(略)」

そんな季節に、また読み返したくなる、そういう作品だと思います。
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星 ゆう輝

Author:星 ゆう輝
人生50年、オタク歴40年弱、母親業四半世紀。老眼とボケが迅速に進行中。麗しいロボ執事をはべらせるのが老後の夢。

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