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2010. 03. 11  
かねてより「凄い! 凄い!」と評判を聞いていた、よしながふみさんの「大奥」をやっと読む。

噂にたがわぬ、凄まじい作品である。

「もし、若い男ばかりが罹患して死ぬ病があったとして、男女の人口比が1:5くらいになってしまったとして、しかもそれが日本の江戸時代初頭に起きていたとしたら?」

という仮定を前提として、その後、日本はどういう社会になってゆくのか? ということを徹底的に思考実験して描かれた、骨太のSFでもあるのだった。


例えば、人間と、人間では無い人間の姿をしたモノ(ロボット)との関わりを描くことで人間そのものの本質があぶり出されていくように、女と男のジェンダー(社会的役割)が逆転した世界を描くことであぶり出されていくのは、産む性である女性と、撒く性である男性との本質的な差違である。

社会的地位や役割が転換して、女と男の生き方が驚くべき変貌を遂げたとしても、決して変えられない、揺るがない役割が存在する。
ヒト、ホモサピエンス、哺乳類の一つとしての存在としての本質である。

そして、何が変わろうが変わるまいが、文明社会的存在としての人間の在り方の根本もまた、揺るぎない法則を持っているのだということもまた描かれる。

ヒトは何故、寄り集まり、群れ集い、社会を成して、「人間」となるのであるか。
ヒト、とニンゲン、の違いは何か。

人は、他人との関わりの中、己の価値を差違の中で求めていくようになる。
その価値を、他人と取り引きし始めるようになる。
この「取り引き」こそがニンゲンの存在理由なのだ。
自分に価値はあるか。どれほどの価値か。アイツとくらべて、コイツと比べて、自分は上なのか下なのか。
上がったと言っては幸せになり、下がったと言っては絶望し、下げられたと言っては激怒する。
これこそが、人間が人間である限り逃れられない宿業であり、人間のなりわい総ての根本にあるものであり、ヒトをニンゲンたらしめる本質である。

日本社会の頂点に立つ女将軍の後宮、美男三千人の大奥において、やれ美貌がどうの、地位がどうのと、どこまでも陰険陰湿ジメジメと、まさに「女の腐ったような」諍いやイジメを男達が繰り広げていくようになる様の皮肉な鋭さよ。

だがこの作品の白眉は、そんな権力争奪のさなかにあってどこまでもキリリと凛々しく、人間として正しく浄く正義であろうとする、希有な人物の生き様と闘いにあるのだった。

魅力的であり、凄みを持った、様々なことを思い感じさせてくれる傑作である。
この秋に映画になるらしいが、映像を観る前に是非先だって読んで欲しい、と思うのだった。


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Comment
映画化反対なんですよね・・・
本当に駄作になってしまうんだろうと予感がします。
正直映画化を望んでいるファンなんていないと思うんですわ。
あの根底にほの暗いものが流れつつ、笑いや想いを織り交ぜる雰囲気、そしてゾクゾクっとするような主人公達の思いや生き様の吐露。映画じゃ全く無視されるんだろうな。


映画業界もマンガ以外からネタを拾っていただきたいです。
原作以上のものには、まずならないんだから。

Re: 映画化反対なんですよね・・・
Urannちゃん>

う~ん、こればかりはフタを開けてみないとさっぱり判らないわけではありますが。
不安な気持ち、反対したくなる気持ちは良くわかります。
自分が好きな作品ほど、変な扱いはされたくないものですよね。

せめて、「こうやって映像になることで、今までこの作品を知りもしなかった人が手にとって読んでくれるかも知れない」と思うことで自分を宥めましょう。

でもまぁ、そういう人もいる反面、映像だけをみて、原作と映像とは別物だという意識を持つことなく、「ああ、知ってる、ああいうものでしょう?」と適当な評価をしやがるクソボケアホンダラも多く居るだろう、と思うと辛いものですよね。

そういう場面に出くわして激しく感情が傷ついてしまったとしたら、「違う! マンガと映画は別なんや! 一緒にしてるお前がアホじゃ! 読め読めよまんかーい!!」と叫ぶくらいのことはしても良いんじゃないかな。まぁここまでキツイことは言わない方が良いにしても、原作の魅力を有無を言わさぬ強引さで熱く語り倒してやるくらいの権利は、原作ファンにはあって良いと思うのでした。


なお、小説・マンガが映像になったケースとして、「原作も大好きだったが映像化はそれを上回るほど好きになれた、どっちも素晴らしく愛せる例」がどれほどあるか、という議論を先日してまして、私的には「ファンシィダンス」これ一作しか存在しない、という結論が出ました。侘びしいなぁ。
No title
「大奥」ティプトリー賞取ったそうです。
すごいな~。
Re: No title
CHIEさん>

ティプトリー賞!?

ぬぉぉ、この↓ニュースですか!
http://news.livedoor.com/article/detail/4667275/

たいていの方には「ティプトリー」という名がどういうものなのかが通じないでしょうけれども……(´・ω・`)

いいんだ! 
確かに、まったき意味でこの作品はその名に相応しいものだと、私なら判るもん!(`・ω・´)
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プロフィール

星 ゆう輝

Author:星 ゆう輝
人生50年、オタク歴40年弱、母親業四半世紀。老眼とボケが迅速に進行中。麗しいロボ執事をはべらせるのが老後の夢。

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