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2010. 04. 20  


ルネサンス期、ヨーロッパ全土の民から「イタリア随一の女性(ラ・プリマ・ドンナ・ディターリア)」の呼び名で讃えられた美女がいた。
肖像を見る限り、繊細な面立ちに女性らしいまろやかな美をたたえた、たおやかで上品な淑女である。
この女性の、自身の美容に対するこだわりと追求は高度に洗練されたものであり、彼女が独自に研究して作り上げた美容・化粧・健康のためのレシピは後代、全ヨーロッパの貴婦人達の手本となって広がり定着していったという。

カテリーナ・スフォルツァ。小国フォルリの女領主。

だがその繊細な華のごとき容姿の奥に潜んでいたのは、いかなる艱難辛苦も砕き壊して焼き尽くす、灼熱烈火の魂だった。
イタリア随一の女性。もう一つの通り名は「ラ・ヴィラーゴ・ディターリア(イタリアの女傑)」。
炎の如く闘い、炎の如く愛し、残忍無比の仕打ちでもって領民を震え上がらせ、「カテリーナ様が来ますよ」と言われれば泣く子も黙ると言われた伝説の女丈夫。

塩野七生さんが「ルネサンスの女たち」の中で描いた彼女のポートレイトの鮮烈さに匹敵する存在を私は他に知らない。少なくとも日本の歴史の中には見つからない。

荒くれ野武士の身から成り上がり、ミラノ公国の主となったスフォルツァ家。
その公女であるカテリーナは、家名の語源である「ロ・スフォルツォ(何事をも力で成し遂げる)」の精神を先祖から受け継ぎ守り抜こうとした気概の主でもあった。

14の時に、父を暗殺で喪う。
その涙も乾かぬうちに、法王の甥にして後継者・ジローラモの妻となるためローマに嫁ぐ。
齢14の豪胆な美少女を、時の法王シスト4世はことのほか溺愛し、ローマのファースト・レディとしての栄耀栄華をほしいままにした生活であったという。

だが夫のジローラモは粗暴で無思慮な男であった。
伯父であり、絶大な後ろ盾であった法王の死後、ジローラモもまた暗殺の憂き目にあう。
カテリーナは幼い子供たちと共に反乱軍に捕らわれ、国を、城塞を明け渡すように迫られるのだった。

だが、「必ず城塞を明け渡す。家臣を説得してみせるから私を行かせてほしい」と反乱軍に言い残し、単身城塞に消えたカテリーナは、待てど暮らせど出ては来なかった。
一夜が過ぎ、二夜が過ぎた。
しびれを切らした反乱軍は、彼女の幼い息子たちを城壁の下に引きずり出し、武器を突きつけ、約束を果たさねば子供を殺す、と叫ぶのだった。

城壁にカテリーナがあらわれた。髪を風に流し、裸足のままで。
脅え泣き叫ぶ幼い息子たち。
「子供の命が惜しければ、言うとおりにせよ!」
カテリーナはやおら、スカートの裾をガッとまくり上げ、大音声で叫び返した。
「この馬鹿者め! 子供など、これがあればいくらでも作れるのを知らぬのか!」

時にカテリーナ・スフォルツァ、25歳。
財力権力の集うローマ、ヴァチカンの膝元で磨かれ抜いた美貌の絶頂であったろう女性のこの蛮勇(ノーパンであったろうと信じる)にあっけに取られた反乱軍の足元に、砲弾がズドンズドンと降り注ぐ。戦意をくじかれた反乱軍はほうほうの体で退却し、カテリーナは貴重な時間を稼ぐことが出来たのだった。

見事反乱軍を崩壊させ、幼い長男を表向きの領主とし、摂政としてフォルリの事実上の主権を握ったカテリーナ。
だが、烈火の女傑は、恋もまた炎の如し。
8歳も年下、わずか18の美少年・ジャコモ。亡夫の小姓であった彼との身分違いの恋は、露見すれば直ちに摂政としての権利も立場も喪うことになる、危険極まりない関係だった。
だがカテリーナは引かなかった。巧みな外交で追求をかわし続け、その裏で極秘に結婚を果たす。

何事をも成し遂げる魂。真っ直ぐな、剛毅な心。
闘いにひるまず、脅しに屈せず、恋もまた迷うことなし。
愛したからには結婚する。
愛人などという姑息な隠蔽は、彼女の生き方そのものに対する侮辱、とでも思っていたのではあるまいか。

だが、溢れるほどの愛を注がれたゆえの増長か、女領主の夫としてのさばりはじめたジャコモは、家臣たちの憎悪を買ってしまった。
カテリーナは、父、最初の夫に続いて、二人目の夫まで暗殺で喪うことになるのである。

心から愛した第二の夫を殺されたカテリーナの憤怒は凄まじかった。ただちに始まる血みどろの復讐劇。首謀者たちが捕らえられ、拷問の果てにズタボロの死体を三ヶ月城壁に吊しただけではとどまらなかった。
「一族郎党、家系の末端に至るまで血を絶やせ」
女も子供も老人も差別なく容赦無く、あるものは斬られ、ある者は死ぬまで馬に引きずり回され、幼い子供を抱いた母親は生きたまま井戸に投げ込まれ、10日あまりの間に、殺された者40名、投獄された者50名、フォルリの市街は連日連夜、引き立てられていく人々の哀願と悲鳴に満ち、ロマーニャ全土がその残虐に震え上がった。
恐るべきカテリーナ。この衝撃は伝説となって、今に至るもフォルリ地方での子供の躾に使われる脅し文句となっているという。

憤激が収まり、冷静さを取り戻しても、カテリーナはあまり良い領主ではなかったようである。強引な圧政に、領民の心は離れていく一方だった。
それでも、持ち前の気力と意思でもって、フォルリのちっぽけな国境を彼女は必死に守り続けた。イタリア半島はまさに油断を許さぬ戦乱の時代を迎えていたのだ。時に小ずるく、時に大胆に、怜悧に鋭く立ち回らねばたちまち立場を失う。父も夫もすでに亡く、長子はイマイチ愚鈍であてにならず、まさに孤軍奮闘。
女としての美貌も武器にしながら、巧妙に交渉を有利に持ち込んでゆく様を、フィレンツェの外交官であったマキャヴェッリは
「男の心を持った女性」
と敬愛の気持ちでもって書き残しているそうだ。
この頃、カテリーナ36歳。徹底的な美容術によって、未だ凛然と麗しかった彼女に、運命のドラマはまだまだ残されていたのだった。

第3の夫となるべき美青年、メディチ家の貴公子ジョヴァンニとの出逢い。

そして、愛でもなければ恋でもない壮絶な出逢い。
互いの存亡をかけた命のやり取り、彼女のすべてを蹴散らし飲み込もうとする、人の形をした黒い嵐、「絶世の美公」チェーザレ・ボルジアとの邂逅。

破竹の勢いで諸国を片っ端から平らげ続け、イタリア中の男たちがたたきのめされ屈服するしかなかった「悪魔の子」チェーザレに、ただ1人、女の身で正面激突で挑んだ女、カテリーナ。

一晩ではまとめきれなかったので、続きは後日!

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人生50年、オタク歴40年弱、母親業四半世紀。老眼とボケが迅速に進行中。麗しいロボ執事をはべらせるのが老後の夢。

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