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2010. 05. 06  
塩野さんの「わが友マキアヴェッリ」やっと読了。

冒頭で、マキアヴェッリが、親友に宛てた手紙が紹介されている。
フィレンツェの外交官職を喪い、田舎に隠遁せざるを得なかった44歳のマキアヴェッリが綴った、日々の暮らし。
ざっとまとめるとこんな感じなのである。

1.夜明けと共に起床。伐採作業員の現場に行って、監督的お仕事、2時間ほど。
2.泉のほとりに行き、小説や詩集をひもといて、物思いに耽ってすごす。
3.居酒屋に行き、旅人たちと対話。情報収集など。
4.家に戻り、つましい昼食を家族ととる。
5.また居酒屋。常連たちと、日が暮れるまでバクチ三昧。イジワルをし、罵りあい、馬鹿騒ぎをする「ならず者」として過ごす。「こうして自分を踏みにじるのは、運命の神が、私を苦しめるのをいまだに恥ずかしがっていないかを、ためすためなのだ」
6.帰宅し、書斎に入る。汚れた野良着を脱ぎ、官服をまとう。夢想の中の宮廷に参上し、古今東西の君主たちと対話する。「4時間というものまったく退屈を感じない。(中略)彼らの世界に、全身全霊で移り棲んでしまうからだ」

そうして、夢想の対話から得た思想を、「君主論」というものにまとめようと思っている、と結ばれる手紙なのである。

私は、読み始めて早々と、この手紙一つでもうすっかりマキアヴェッリに参ってしまった。
作業監督としての彼。
ロマンチックで優雅な文人の彼。
官界復帰の夢を捨てず、情報収集を怠らない官吏の彼。
清貧な良き家庭人としての彼。
一転、野卑で粗暴なDQNオヤジと化す彼。
独りの書斎で、奪われた職の官服に着替えて、脳内仮想現実で生きる彼。(夜な夜なコスプレして脳内夢想ですかニッコロさーん!Σ(゜д゜lll))

いったい、いくつの顔を持っていたのだろう。わずか1日の間にこれほど自分を変貌させうる者。
そして、一日の終わりの数時間を夢想三昧で過ごし、それこそが、そのために生きていると言わしめるほどの魂の糧である、と書くほどの破格の心眼力よ!

もうこのくだりを読んだだけで、マキアヴェッリは私にとっても「友」となった。

読む前までは、マキアヴェッリをもっと全然違う風に想像していたのだ。もっと深刻ぽい、怜悧でクールで沈着なタイプ。

だが、塩野さんが綴る彼の肖像は、あまりに違った。もの凄いスピードで語り、綴り、行動し、激動の時代を迎えたフィレンツェの書記官(実質は外交官)として欧州中を飛び回り、「ややこしい交渉事はヤツに任せろ」てなノリで酷使されまくっていながら、隙を見ては浮気をしまくり娼婦を買いバクチを打ち、くそ真面目な報告書、論文、歴史書だけではなく、物語も書き、エロ喜劇も書き、それが劇場で大当たりを取ったり、しじゅう酒を飲んでは知人たちと大騒ぎ。
マキアヴェッリが居るから人が集まり賑やかになり、マキアヴェッリが居なくなると、みな生気を失って退屈な日常に戻っていく。死ぬまで、そういう御仁で在り続けたようである。

星のように明るく輝く目を持った、明朗で精力的な賑やか男。
だが論考は研ぎ澄まされたナイフのように鋭く的確。
いくつもの顔を内に持つ人間特有の精神的自由を基盤とした透徹の視線で書かれた文章は、数百年の時を超えて読み継がれ、実用書として今に至るも発行され続ける。

不思議と、彼がこんなに気に入ってしまった私なのに、いつもの「脳内ツバメ箱(収容数一千羽)」に彼を入れる気にはならなかった。素晴らしい男である。だが、萌え~、とは違うのである。

我が友、マキアヴェッリ。

これほど似つかわしい言葉があるだろうか。
ニッコロ・マキアヴェッリは、そんなヤツなんである。

そして、すべて読み終えたラストのページには

「読者に

 これを読み終えられた今、あなたにとってもこの男は、「わが友」になったでしょうか

               1987年・春  フィレンツェにて 塩野七生」

と書かれていたのであった。

まさしく。まさしく、貴女の意図どおりでございます、塩野さん。


もうこうなると実際に彼が書いたものにドップリと浸かるしかあるまいて。
というわけで全集1巻(君主論込み)を図書館に予約中。早く届けw  それまで、異様なまでに魅力的な都市国家であったらしいフィレンツェの写真集とか見て待つから。

あ、「海の都の物語」も読み始めたのだった。フィレンツェに負けず劣らず特異で魅力に満ちた国家であったらしいヴェネツィア一千年の歴史。塩野さん、これまた冒頭からぶっ飛ばしておられます。

あーローマ行きたい。フィレンツェ行きたい。そしてヴェネツィア行きたい。本気でイタリア語を勉強しようかしら。いやマジで。そういえばこんな日記を書いた日もあったんだっけなぁ。
いずれ行く、必ず行くともーっ('Д')



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人生50年、オタク歴40年弱、母親業四半世紀。老眼とボケが迅速に進行中。麗しいロボ執事をはべらせるのが老後の夢。

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