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2010. 06. 08  
世界の年表に先んじて「アシモフ選集 歴史編12 近東の歴史」に手をつけているのだった。
西洋史は最近少し読んだし、中国史も隣国の歴史ということでわずかくらいは囓っている。(そもそも日本の歴史を知る上で中国のそれと無縁で済むはずもない)
だが、中東のそれとなると、インドなども含めて、私はほぼさーっぱりなのだった。
歴史も知らねば現状も知らない。
そして、過去をわきまえずに現状を把握することは、私には出来ないのだと最近思い知った次第。

博覧強記の大天才・アジモフ氏は、主にSF、そしてミステリ、科学解説などで知られているが、それらと同じくらいの比重でもって歴史の研究と解説に人生を費やした人でもあった。

そんなアジモフ氏の歴史書は、やはり他の歴史家のそれと一味違う。視点が科学者的であり、創作家的でもあり、つまり怜悧とロマンという相反する要素の間を埋めるように、多様な位置に置かれている。読む人によっては散漫を感じるかも知れない。だが私にとっては、脳のアチコチを一遍に刺激されるようで、大変に心地よく面白い。
そして、まさにこれぞアジモフ! と何よりも強く思うのだった。伊達にアジモフ様アジモフ様とン十年お慕い続けてきてはいませんのよっオホホホホ。



さて近東の歴史、ということは、人類最古の文明・メソポタミアのそれから始まる。
スメール(シュメール)人の物語、なのであった。
チグリス川とユーフラテス川に挟まれた、自然の恵みに満ちた三日月地帯、メソポタミア。
不安定な川の恵みを支配するべく、用水路を巡らせ、作物と生活に必要な水を確保する灌漑農業。
だが、大地を通過して来る水は、塩分を含む。その水を撒き続けることによって、農地は塩分過多になり、作物が育たなくなり、集落は滅びてしまう。
大麦は多少の塩分は厭わず育つ穀物なので、現代に至るまで作付けされている。

このくだりが、目からウロコだった。
大地と水と太陽の恵みがあれば、農業は出来るだろう、という気がしていたが、そんな甘いものではないようだ。
文明社会というものは、結局は人の口をいかに養うか、ということが何にもまさる第一前提であって、その基本が農業にあってこそ発達する。
天の恵み、地の利、それがどういうものなのかによって、どんな文明社会になるのかが決定されるということなのだろうか。
で、日本はどうなのだろう。
日本は水に恵まれた国土だが、河川の距離は短く、流れは速く、振った雨はすぐに海に流れていってしまう、と学校で習ったはず。
米は、塩分に強いのだろうか、弱いのだろうか。
私はそういうことはほとんど全く知らない。
日本の社会を知る上で、農業(主に米作)を知らずに済ませることは出来ない、ということなんですかね、アジモフ博士ーっ?


閑話休題。
スメール人は、建築、を作った。日干し煉瓦を積むことによって。天と神に近づこうとして、ジッグラト、バベルの塔を作るほどの、それは洗練ぶりだった。

スメール人は、文字を作った。粘土に尖った棒を押しつけて刻み、焼き固めることによって保存する。(ハードコピーの原点がまさにコレ)

スメール人は暦を作った。1年を12ヶ月に割り、1日は24時間、1時間は60分で1分は60秒とした。
(規則正しい暦が無ければ、作物の植え付けをいつして良いかわからなくなる。正確な暦は、農業を守るために無くてはならないものであり、文明を支える基本なのだった)

スメール人は、度量衡を作った。作物を効率よく管理、分配、保存、取り引きするためである。

スメール人は、車輪を作った。それまで地面を引きずるしかなかった運搬という作業の効率が、桁違いに跳ね上がった。

スメール人は、金属を作った。青銅による武器は石器に対して圧倒的な強さを誇り、戦いを勝利に導いた。

そして。

スメール人は物語を作った。
史実の記録ではないフィクションが作られたのだ。世界最初の叙事詩「ギルガメッシュ」である。
(そこ! こんなもん鳴らすな! エクスカリパーとか言い出すな!)

ギルガメッシュの伝説は、後世のあまねく世に流布し、様々な創世記、神話の原型となった。
人間にとっての「物語」のパターンがすでにこの時代に出来上がっていたのかと思うと、リアルな人生とかけ離れたストーリー、ドラマ、ロマン等々、現世現実ならぬ「幻世幻実」というものに対する人類の執着というものは、まさに業とでも言うべきものではないかと、改めて思うのだった。

文明が起き、国家が生まれ、争い合い、英雄が生まれ、統一と支配がされ、帝国となり、栄え、衰え、外敵に襲われ滅び、スメール人は消滅していった。
「トロイ戦争に先立つ700年前、ローマという小村の築かれる1100年前」とアジモフは記す。

そして私が何より驚いたのは、このスメール人という文明の存在を人類が知ったのが、19世紀の終わり近くだった、という事実である。
人類初の歴史を作った文明と民族の存在は、人類の歴史のつい最近にいたるまで、存在しないも同然であった、ということ。
ではいったい、現時点で、人類ごときがわきまえている「歴史」など、いかほどのことだろう?
これから、どれほどの発見があって、どれほど塗りかえられていくのだろう?

いずれはギルガメッシュも読まねば。
そして、人類文明発祥の時点から、いかに人類が骨の髄まで「人類」に他ならず、今も昔も変わらぬ心がそこにあるのだろうなぁ、と予測するのだった。
だって、かいつまんで聞いた話では、英雄と英雄どうし、つまり男と男が、殴り合うことで仲良くなる、というあまりに良くあるオハナシがすでにそこにちゃんとある、ってことらしいのだもの。嗚呼度し難き者汝の名は漢也。


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稲は
 塩分があると、育ちませんw
Re: 稲は
Mizuneさん>
あー、やっぱそうですか。
塩分が溜まるほどに長く水が大地にとどまらない国土ってことなんでしょうかね、やはり。
いえいえ
 日本でも、昔は塩害で相当被害が出てたんですよ。

ただそういったところはみんな干拓して、塩分が入らない
ように江戸~昭和までずっと改良を重ねた結果でして。

 最近でも、お米じゃないけど有明海の第十堰の門を
もう一度開けると塩分が入ってきてしまって野菜が駄目
になる、という話がありました。
 
Re: いえいえ
Mizuneさん>
>  日本でも、昔は塩害で相当被害が出てたんですよ。

やはりそうなんですか(´・ω・`)
なんとも私は農業のことはさっぱり知らなくて、恥ずかしいです。干拓って、水を抜いて農地にすること「だけ」だと思ってました。
作物を作る、というのはホントに生やさしくは無いんですね。

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星 ゆう輝

Author:星 ゆう輝
人生50年、オタク歴40年弱、母親業四半世紀。老眼とボケが迅速に進行中。麗しいロボ執事をはべらせるのが老後の夢。

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