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2011. 10. 22  
今観ているアニメでは「転るピングドラム」が群を抜いて面白い。

この作品には初回から、不思議な青いペンギンたちが登場する。
主人公の家族にまとわりつき、主人公たち以外の人の目には見えず、不思議な行動をして回る。
長兄、次男、末妹に対応して、それぞれ1号、2号、3号と呼ばれる。
話が進むと謎の女性が登場し、彼女にも対応するペンギンがいることが判る。
1号達とは異なる、漆黒の毛並み。
エスメラルダ、と呼ばれている。

話が進むと、ペンギン達の行動がそれぞれの飼い主(?)の人格に対応した存在だということが見えてくる。
さらに言うなら、主人公たちが普段秘め隠し抑圧している、言動と裏腹の欲望や本質をそのまま表している存在であることが明らかになってくる。

キツ目の長男、妹思いの長男、苦労を一人で背負い込み、家族のためなら如何なる犠牲も厭わない、男らしい長男。
そのお付きである1号ペンギンの行動の第一義は、エロである。覗き、痴漢、盗撮、下着窃盗、アダルト物件の蒐集と鑑賞。

優男の次男、おとなしい次男、家事が得意で細やかな心遣いとお節介の次男。良識と社会性を慮る善人の次男。
そのお付きである2号ペンギンの行動の一義は、暴食である。目の前にある食べ物を片っぱしから貪り喰らう。毒であろうとなんだろうと、食える限りは食い尽くして死に掛けることも厭わない。不気味なのは、とことん静かにそれを行うところである。淡々と、粛々と食い続ける。好き嫌いは無い。無心に、ただすべてを食う。
2号の行動の二義は、狩りである。狙うのはゴキブリのみ。ゴキブリを見かけ次第、ただちに殺虫する。殺すだけでは飽きたらず、殺したゴキブリを丁寧に並べて遊んだりする。暴食よりはるかに不気味である。

可愛い末妹、無邪気で病弱の妹。笑顔の明るい妹。
お付きの3号ペンギンは目元にチョロッと睫毛の生えた、髪飾りを常に欠かさない愛らしいペンギン。いつも妹と共にいて、一緒に手芸したり遊んだりしている。

ペンギン達は一切口をきかない。何も語らない。何のために存在し、何のために主人公たちと居るのか未だに不明である。正直、3号の穢れ無き無邪気さにこそ何か裏がありそうな得体の知れなさがある、と思っていたのだが、妹ちゃんが瀕死に陥った時に同時に3号もひっそり消滅しようとしているのを見て、実にストレートなつながりしか無いことが判明した気がした。
ペンギン達は、対応した人間の反映そのもの。人間がソトヅラを取り繕い、見栄や建前や抑圧を抱えているほど、押し殺された本当の中身をペンギンが変わって代行するのである。
つまり、何の抵抗もせず妹ちゃんと同時に死に絶えかけたペンギン3号の存在は、そのまま妹ちゃんの裏表の無い純真さを示すものだった。二人の兄に守られ育てられ惜しみなく愛情を注がれた乙女。純粋培養の華。ほぼすべての男性が憧れ夢見るであろう、無垢の美少女。そして3号。ただひたすらに愛される存在。


うってかわって、漆黒ペンギンのエスメラルダ。
彼女のマスターは、キツ目イケメンの長男を焦がれ求めるストーカー美女である。
だが、妹愛に満ちた長男君は、彼女の執着なんぞに目もくれない。たとえ妹愛が無かったとしても、手前勝手な理屈と幻想を押し付けてくるストーカーなんぞ、まともな神経の男性なら願い下げなのは当然だろうけど。いくら美女だといったところで。

目的のためには手段を選ばず、傷害も殺害も平然とこなす、およそ狂った美女。執念と渇望と妄想の権化。恋に狂った女の恐ろしさをすべて備えた脅威の乙女。言動は過剰に装飾的で、謎めいており、つかみ所が無い。得体の知れないキャラばかりのピングドラムの世界の中でもトップクラスのわけのわからなさである。

が、それゆえに、お付きのペンギン・エスメラルダはとても判りやすい存在になっている。そこが、たまらなく可笑しくて可愛い。
恋する乙女、愛されたい乙女、求め焦がれやまない執念の乙女。私を見て、私を愛して、私を承認して、私を受け入れて、私のものになって、私に触れて、欲しい。
異性を好きになった乙女の切なる願い、純粋で混じりっ気無しの願い。あまりに多種の、大きな欲望。
誰でもが抱く、ストレートな思い。
恋する乙女の図々しさと驕慢と愚かさを包み隠さず表すエスメラルダ。プライドが高そうで我慢ばかりが先に立ってしまっているマスターの代わりに、存分に欲望を解放するエスメラルダ。神々しいまでにバカである。清々しいほど遠慮が無い。豪快に1号ペンギンに迫り、惜しみなく奪う。つっても唇止まりだけど。

裏表のない清純さは万人に愛されるものであるし、尊いものだと私も思うけれども、それよりももっと遥かに、エスメラルダの正直な心の開放の方が私には良いものに思えるのだ。華は何も行動しない。何もしなくても与えられる。結構なことだ、でも何も面白くない。
求めて、願って、思いを尽くすアグレッシブ。無様だろうと笑われようと失敗しようと報われなかろうと、行動すること。面白くて、可愛いエスメラルダ。
そしてちょっぴり哀しいエスメラルダ。
頑張れ、エスメラルダ。エメラルドは、傷あってこその価値なのよ。

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Author:星 ゆう輝
人生50年、オタク歴40年弱、母親業四半世紀。老眼とボケが迅速に進行中。麗しいロボ執事をはべらせるのが老後の夢。

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